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税務トピックス 記事

■2025年9月1日

一体どうしよう 未稼動資産の会計・税務

 

◆半導体大手、新設工場4工場が未稼働

 日経新聞によると、日本の半導体大手企業が新設工場として2023年以降に竣工した国内工場の7工場のうち、2025年4月末時点で4工場が本格稼働していないとのことです。日本国内の半導体投資(2022~29年)は約9兆円規模の見込みですが、AI以外の半導体需要は低調で、世界的にも工場稼働率は上がっていないようです。

 

◆会計上は、営業外で償却し、減損を検討

(1) 会計上の減価償却

 会計の考え方では、事業用資産として取得したものの、稼働を停止している資産(遊休資産)でも減価償却を行うことになります。ただし、「原価計算基準」では「未稼働の固定資産」「長期にわたり休止している設備」に関する減価償却費等の費用は、非原価項目として例示されているため、損益計算書上は営業外費用により表示します。

(2) 会計上の減損処理の検討

 将来の用途が定まっていない遊休資産は、「使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合」として、帳簿価額を回収可能な価額まで減額(減損処理)することが求められることもあります。中小企業会計指針では、大企業ほど厳密な処理は求めていませんが、将来使用の見込みが客観的になく(資産が相当期間遊休状態)、かつ、時価が著しく下落している場合には減損損失(特別損失)を認識することとしています。

 

◆税務では原則償却NGだが例外がある

(1) 税務上の減価償却

 税務では、事業の用に供されていない資産は、減価償却資産に該当しないものとされています。ただし、現に稼働を休止していても、休止期間中に必要なメンテナンスが行われ、いつでも稼働し得る状態にあるものは、減価償却が可能です。また、生産を相当期間にわたり休止した場合、休止期間の償却費は、製造原価に算入しなくても構わない(原価以外の費用)とされています。

(2) 税務上の評価損の検討

 税務では資産の評価損は原則として認められていません。ただし、「その固定資産が1年以上にわたり遊休状態にある」又は「その固定資産がその本来の用途に使用することができないため他の用途に使用された」という事実があった場合に、時価までの金額の範囲内で損金経理した評価損の損金算入が認められています。

<記事提供者:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年9月1日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年9月1日

夫婦で共有する居住用マンションの譲渡所得

 

 マンション市場は海外からの投資を呼び込み、空前の価格高騰を引き起こしています。不動産経済研究所の公表する2025年2月分の不動産価格指数は、211.8(2010年平均=100)、この15年で2倍以上となり、この機会に自宅を売却する人もいます。

 

◆譲渡所得に課税

 不動産の保有期間中のキャピタルゲインは売却によって実現し、その収入金額は担税力を生むので、譲渡所得に課税されます。

 譲渡所得は、売却による収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて算出します。取得費はマンション取得時の購入価額、印紙代、購入手数料、登記費用など。譲渡費用は売却時の仲介手数料、印紙代などです。

 

◆居住用は譲渡所得から3,000万円を控除

 居住用不動産を売却すると新たに居住用不動産を購入する資金が必要となり、売却によって得た担税力が減殺されてしまいます。そこで居住用不動産の譲渡所得から3,000万円を控除する制度があります。

 この制度は夫婦で共有するマンションを売却する場合にも、一定の要件を満たせば適用され、それぞれの所有持分に応じて譲渡所得から共有者一人につき3,000万円まで控除が行われ、税額を圧縮できます。

 

◆3,000万円特別控除の主な要件

 3,000万円特別控除は、現に自分が住んでいる家屋の譲渡、家屋とその家屋の敷地の用に供されている土地等の譲渡、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までの家屋・土地等の譲渡などに適用されます。

 また、譲渡した年の前年、前々年に、既にこの3,000万円控除の特例等を受けている場合は、この特例は適用されません。

 住宅ローン控除は入居した年、その前年、前々年に3,000万円控除の特例を受けた場合には適用されません。なお、住宅ローン控除を受けた物件を譲渡した場合、その物件に3,000万円控除の特例は適用されます。その他の要件は国税庁のタックスアンサー等で確認できます。

 

◆所有期間10年超は、更に軽減税率を適用

 売却した年の1月1日において所有期間が10年を超える居住用不動産で国内にあるものを売却する場合、3,000万円の特別控除額を差し引いた後の長期譲渡所得に軽減税率が適用されます。長期譲渡所得金額6,000万円以下の場合、所得税率10%(通常15%)、住民税率4%(通常5%)が適用され、負担が更に軽減されます。

<記事提供者:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年9月1日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年8月3日

報道発表資料から見る令和6年分の確定申告状況

 

◆定額減税の影響?

 国税庁は毎年、所得税等・消費税・贈与税の確定申告状況を報道発表しています。令和6年分の申告所得税及び復興特別所得税の申告人員は2,339万人で、対前年比+0.6%、納税人員の所得金額は51兆1,604円(+3.2%)、申告納税額は4兆3,989億円(+8.6%)となっていますが、申告納税額がある方は517万人(-22.6%)となっています。全体の納税額は増えていますが、納税がある方が大幅に減ったのは定額減税制度の影響でしょうか。

 

◆申告人員の約4人に3人はe-Tax利用

 e-Tax利用による所得税等の確定申告書の申告人員は1,732万人(対前年比+7.9%)で、前年分から127万人増加しました。全体の申告人員が2,339万人ですから74.0%がe-Taxで申告していることになります。

 e-Taxの中でも「自宅からe-Taxで申告」をしているのが申告人数全体の4割弱、そのうち約半数がスマホを利用しており、身近なデバイスを利用した申告がかなり浸透してきていることが分かります。また、マイナポータル連携を利用した「書かない確定申告」を推進した結果、マイナポータル連携の利用者は310万人に拡大、前年の191万人を大きく上回る利用となりました。

 

◆休日の申告相談者数が減少

 税務署は給与所得者を中心とするニーズに対応するため、平成15年分申告以降、確定申告期間の日曜日に休日(閉庁日)の相談対応を実施していますが、閉庁日に来場して申告した人はピーク時の約3割に減少しています。

 国税庁は来場者の減少傾向を踏まえ、今後も閉庁日対応の段階的な縮小・廃止の検討を進めていくようです。

 

◆株式等の譲渡所得の増加

 株式譲渡益の申告については所得金額が8兆854億円(対前年比+42.7%)と大幅な増加となっています。

 株式譲渡益の所得の増加は、景気や為替が影響しているのはもちろんのこと、M&Aの推進等も関係していると思います。また、令和7年からは「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」という標準所得金額から3億3,000万円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額が、その年分の標準所得税額を超える部分について追加で所得税を課す制度が始まるため、駆け込みでの譲渡があったのかもしれません。

<記事提供者:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年8月3日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年8月3日

1,000円の最高裁は退職金全額不支給を認める着服で1,200万円の退職金なし

 

◆法人住民税の均等割

 最高裁は2025(令和7年)年4月17日、運賃1,000円の着服と、バス車内での電子タバコの使用違反により懲戒免職とされた市バス運転手に対する約1,200万円の退職金不支給を裁判官全員一致で認めました。

 二審の大阪高裁では、懲戒免職は有効としたものの、1,000円の運賃着服で1,200万円もの退職金の全額不支給は酷に過ぎるとして裁量権の範囲を逸脱したものと判断し、市交通局が上告していました。

 一転して、最高裁が退職金不支給を認めたポイントは何だったのでしょうか?

 

◆退職金が全額不支給となった経緯

 退職金を全額不支給とされたのは勤務歴29年のベテラン運転士で、過去に事故を理由とする4件の戒告処分と2件の注意以外には、服務違反や公金取扱い等による懲戒処分歴はありませんでした。

 事件は令和4年2月の乗務中に、乗客5名分の運賃1,150円を受領した際に硬貨を運賃箱に入れさせ、1,000円札を自ら手で受け取ってそのまま着服したものです。

 他にも、同月に車内で使用が禁止されている電子タバコを4日間で計5回使用していたことがバスのドライブレコーダーに記録されていました。

 電子タバコの使用は認めたものの、運賃着服については当初否定し、後に上司の指摘を受けて認めたようです。

 

◆公務における公金着服は一発アウト?

 最高裁は「公務の遂行中に職務上取り扱う公金を着服したというものであって、それ自体、重大な非違行為」とし、服務規程で勤務中の私金所持が禁止されていること、運賃の着服を当初認めなかったこと、短期間に複数回の電子タバコの使用違反等から、管理者による退職金全額不支給が裁量権の逸脱や濫用とは言えないと判断しました。

 過去に私鉄社員が勤務時間外に他社電車内での痴漢行為で複数回逮捕され、有罪判決を受けて懲戒解雇となり退職金全額不支給とされた事件では、東京高裁は退職金の3割請求を妥当と判断していました。

 公務中の公金着服や服務規程違反は、一発アウトもやむなしと判断したものと思われます。民間のバス会社の場合であっても同様の判断が下されるかもしれません。

<記事提供者:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年8月3日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年7月2日

資本金等の額減少で均等割節税

 

◆法人住民税の均等割

 法人道府県民税の均等割税は資本金等の額の5区分、法人市町村民税の均等割税は資本金等の額の5区分と従業員の数の2区分とによって決められています。所得の有無に関係なく、赤字でも負担しなければなりません。資本金等の額1000万円以下、従業員数50人以下の分類区分が税負担の最少区分です。

 

◆減資で均等割節税への試み

 ところで、この税負担の軽減を企図して資本金の減少手続きをする場合があります。でも、資本金を減らしただけでは均等割税の軽減はできません。減資資本金は資本剰余金の額に振り替わるだけで、資本金等の額の総額に影響しないからです。

 資本金等の額は税法上の概念で、株式発行や組織再編で受け入れた出資額の内、資本金とした金額とそれ以外の金額の合計とされており、会計上の「資本金+資本剰余金」に近い概念です。

 

◆資本金等の額の減少への税の抵抗

 なお、資本金等の額を実際に減らそうとして有償減資や資本剰余金の配当をしたとしても、資本金等の額が直ちに減少するとは限りません。税務的には、「資本金等の額×資本剰余金減少額÷簿価純資産額=減少資本金等の額」の算式で計算されることになっているからで、簿価純資産の中に利益剰余金がある限り資本剰余金の減少を直ちに資本金等の額の減少にすることはできません。

 例えば、資本金2000万円、資本剰余金0円 利益剰余金1000万円の会社が資本金等の額を1000万円にするには、有償減資1500万円しなければなりません。そうすると、資本金等の額1000万円(うち資本金500万円)、利益積立金500万円となります。

 

◆税の抵抗を受けない方法

 しかし、資本剰余金の減少を直ちに資本金等の額の減少にする方法はあります。自己株式の取得です。自己株式の取得は税法上は資本金等の額を減少する行為とされているからです。

 でも、「資本金+資本剰余金」が資本金等の額を超えていたら法人住民税均等割の税率区分の基準は資本金等の額ではなく「資本金+資本剰余金」の額とする(平成27年以後)とされているので、自己株式の取得だけでなく、「資本金+資本剰余金」と自己株式を相殺して消却処理をするというもう一つの手間が必要になります。

<記事提供者:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年7月2日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年7月2日

会社役員・使用人兼務役員・みなし役員

 

◆会社の業務執行者である代表者

 取締役は、株式会社を代表します。ただし、代表取締役を定めている場合には、代表取締役のみが会社を代表します。代表取締役には業務を執行する権限があり、また、会社の代表として、契約行為や裁判に関する行為をする権限があります。

 

◆役員で使用人は使用人兼務役員

 会社法では、取締役(役員)と従業員は明確に区分されています。役員は、株主総会で選任され、会社に対する各種の責任をもちます。でも、役員でありながら、部長、課長その他法人の使用人としての職務に従事する人もいます。こういう人を「使用人兼務役員」といいます。部長、課長等ではなく、専務、常務等の呼称だったとしても、代表権・業務執行権のない者の場合は、呼称のみの名刺専務等といわれ、通達では、使用人兼務役員の対象から外れない、としています。

 

◆使用人兼務役員の労働者性要件

 役員は株主総会で選ばれて委任契約を結び、雇用契約外の関係なので、本来は、労災保険と雇用保険の適用がありません。ただし、使用人兼務役員の場合は、①役員報酬が労働者としての賃金を上回っていないこと、②代表権・業務執行権を持っていないこと、③就業規則が適用されていること等の条件付きで労災保険・雇用保険の適用を受けられることになっています。

 

◆税法で規定するみなし役員

 なお、法人税法上の役員はもう少し範囲が広く、会社法上の役員でないのに役員と同じく扱われる「みなし役員」という規定があります。使用人のうち次の①②③のすべてを満たす者などで、法人の経営に従事している者のことです。

①単独で50%超の株主グループ、若しくは第3順位までの持分合計が50%超となる株主グループに属している

②その使用人の所属株主グループの持分割合が10%超

③その使用人(配偶者&同族会社株主を含む)の持分割合が5%超

 

◆みなし役員への制約

 みなし役員とされた者については次の取扱いを受けることになります。

①給与は定期同額給与に該当

②過大な給与は損金不算入

③事前確定届出以外の賞与は損金不算入

④労災保険・雇用保険の適用対象外が原則

<記事提供者:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年7月2日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年6月8日

助成金の受給率を上げる5つのポイント

 

厚労省の助成金は常に内容が変化している

 助成金の申請をスムーズに済ませたい、うまく受給したいと思う事業主のお考えはもっともですが、いつも最新の情報を確認しておかないと必ず不備が生じます。その中でもどの助成金にも共通する必要書類があり、まずそこをしっかり整備しておくことが前提になります。厚生労働省の助成金は主に人材に関するものが多いのですが、助成金の種類によって以下の書類の一部が必要なかったり、追加があったりします。つまり肝心なのは日々の労務管理です。

 以下の書類は審査の際、必ず確認される重要な書類です。普段から備えておけば大幅に受給率を上げることができます。

 

①「出勤簿」を正しく記録しよう

 出勤簿やタイムカードなどの付け方がアバウトになっていると、助成金が不支給になる場合があります。例としては、出勤日だけの記録、始業や終業時刻の記録がない、就業規則に定められていない勤務履歴がある等で、就業規則の内容と出勤簿の付け方を見直しましょう。

 

②「賃金台帳」を正しく作成しよう

 法令に定められていない独自の計算方法で残業手当を計算する等、自社の都合に合わせて賃金台帳を作成していると助成金が不支給になることがあります。申請時期になってから前の計算を直すのは難しいので早めに直しておきましょう。

 

③「36協定」は届出しておこう

 一部の助成金に限定されますが「36協定」は助成金を申請する前に作成し、労基署に届出しておきましょう。細かな記入漏れや、誤記載があると助成金が不支給になる可能性があります。また、労使協定の内容と勤務実態に相違がある場合も望ましくありません。労使協定の締結と届出は速やかに行いましょう。

 

④「労働条件通知書」を作成しよう

 労働条件通知書又は雇用契約書は労基法で定められていますが、特に助成金申請の対象者の通知書は必ず作成しましょう。

 

⑤「就業規則・育児介護休業」規定を作成

 助成金の種類によって必要な規定も内容も違いますが、ただ規則があればよいというわけでなく、最新の法改正に対応しており、さらに必要な内容が記載されていないと条件が不備、満たしていないという理由で不支給になる可能性があります。

<記事提供者:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年6月8日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年6月8日

人手不足時代の経営術 今こそ組織の再設計を

 

◆過去最高水準の人手不足

 2025年1月時点で、正社員の人手不足を感じる企業は53.4%に上り、これは2018年の最高値に迫る水準です。特に運輸・建設・サービス業で深刻で、「人が集まらない」「すぐに辞める」という声が各所で聞かれます。業種・規模を問わず、人材確保が経営上の最重要課題となっている今、従来のやり方ではもはや通用しないフェーズに入っています。

 

◆採用だけでは解決しない

 調査によれば、約6割の企業が「人材確保・採用」を課題に挙げていますが、「人材育成」や「職場環境の改善」が遅れている実態も浮かび上がっています。特に「職場環境の整備」に関しては、半数近い企業が「実施していない・予定もない」と回答しており、人的資源を活かす視点が十分とは言えません。採って終わりではなく、「育て、定着させる」発想への転換が不可欠です。

 

◆人材多様化への取り組み不足

 政府が推進する副業人材やプロ人材の活用、高齢者・外国人・障がい者雇用に関する取り組みは、中小企業ではまだ広がっていません。実際、調査では「副業・兼業人材の受け入れ」については約7割が「実施予定なし」と答えており、新たな労働力への理解と準備が進んでいない現状が明らかです。固定観念を捨て、多様な人材が働ける制度設計が急がれます。

 

◆賃上げ・評価制度の見直し

 人材確保に直結する賃上げですが、「実施予定なし」とする企業は全体の2~3割に上ります。中でも卸売業・小売業では実施率が低く、業界特有の構造的課題も影響しています。また、人事評価制度や処遇改善に着手している企業は6割を超えており、「人への投資」に取り組む企業とそうでない企業の二極化が進行中です。

 

◆中小企業が今やるべきこと

 人手不足は構造的な問題であり、一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、人材を「コスト」ではなく「資産」として捉え直すことが、これからの中小企業経営の鍵を握ります。人手不足という難局は、実は自社を変える絶好のチャンスです。今こそ、自社の魅力や働き方を見直し、「選ばれる企業」へと進化していきましょう。

<記事提供者:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年6月8日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年5月16日

「一物五価」の基礎となる公示地価

 

 国土交通省がこのほど発表した全国の「公示地価」は、1地点につき2人以上の不動産鑑定士が現地を調査して決められます。ただし調査結果に対して、近隣の土地の売買例や賃貸収入などを基に国土交通省が調整を加え、土地鑑定委員会が最終的に決定したものが発表された価格です。

 

 公示地価は土地の取引価格の目安となるほか、公共事業用地を買収するときの取得価格算定の基準にも利用されます。そのため多くの土地所有者が注目しています。

 

 土地の価格には公示地価以外にも、相続税評価の基準となる「相続税路線価」、固定資産税のベースとなる「固定資産税路線価」、都道府県が発表する「基準地価」、実際に売り買いされる時の「実勢価格」などがあります。そして、公示地価に対して役割に応じた調整を加えたものが路線価や実勢価格となります。一つの土地にいくつもの値段が付いていることから「一物五価」とも呼ばれますが、そのすべてのベースとなるのが、毎年3月に発表される「公示地価」というわけです。

 

 国土交通省が発表した今年1月1日時点の公示地価では、住宅地や商業地などを合わせた地価全体の全国平均が、コロナ禍以降で初めてプラスに転じた2022年から4年連続のプラスとなり、上昇幅も拡大しました。

<記事提供者:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年5月16日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年5月16日

はしかが流行 予防接種費は控除できず

 

 麻しん(はしか)患者が急増しています。はしかは本人自身に肺炎や脳炎など深刻な症状を引き起こすだけでなく、極めて強い感染力を持ち、特に妊婦が感染すると流産リスクが上昇するなどのおそれがあります。

 

 はしかの感染症の患者が増えている背景には、保健政策の変遷のなかで十分な予防接種を幼少期に受けられなかった〝空白世代〟が生じていることや、ワクチンの効果への不信などから子どもにあえて予防接種を受けさせない親の増加などがあるそうです。

 

 ともあれ、自分のためだけでなく家族や周囲のためにも、これらの予防接種を受けていない人はなるべく早く接種を受けるべきでしょう。ただ、はしかの抗体検査や予防接種の費用は、医療費控除の対象にはなりません。医療費はあくまで病気やけがの治療にかかる費用を指し、病気にかからないために受ける予防接種は該当しないというのがその理由で、これはインフルエンザなどにも当てはまります。

 

 そこでチェックしたいのが、自治体のホームページ。多くの自治体では抗体検査や予防接種費用の助成を行っていて、例えば東京・新宿区では、①19歳以上の女性で妊娠予定、または妊娠を希望する人、②そのパートナーや妊婦のパートナーおよび同居者―のいずれかの条件を満たす人に対しては、無料で抗体検査を実施し、予防接種にも最大5210円の助成を行っています。

 

 自治体によっては、予防接種の空白期間に該当する世代(2歳~高校生相当以下)を対象にしているところもあり、この機会に抗体検査や予防接種を受けることを考えておきたいところです。

<記事提供者:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年5月16日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年5月1日

中小企業における省力化投資による設備投資対応 その2

 

 では、中小企業における省力化投資による設備投資においては具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。そこで、中小企業庁編「中小企業白書2024年版」において、積極的な設備投資により生産性向上と職場環境の改善を実現した企業の事例として紹介された中工精機株式会社(本社所在地:岐阜県瑞浪市)の取組みについてみていきましょう。

 

中工精機株式会社は、 地場産業である窯業の原料となるセラミックスの粉砕・精製機等を製造する企業です。同社の社長は、ニッチな分野で顧客に頼られる「オンリーワン企業」を目指し、顧客の細かな要望に応えるために「100%内製化」を掲げて積極的な設備投資を継続しました。同時に深刻さが増す人手不足にも対応すべく、作業工程の自動化、省力化の推進による生産性の向上や、人材確保に向けた職場環境の改善の観点も持ちつつ設備投資に取組んできました。

 同社が投資戦略で重点を置いてきたのが、工場における機械設備のNC(数値制御)化、溶接工程などの自動化です。NCの導入や自動化は、生産性の向上に顕著な効果を上げただけでなく、若手社員が製造現場で活躍できる機会を広げることにもつながりました。さらに、NC化や自動化により業務プロセスの迅速化が進み時間外勤務が減少しました。

 これらの設備投資も含めた職場環境改善の取組効果もあいまって、人材定着率の改善及び新たな人材の確保が進み、一時は不足感のあった従業員数も現在は適正な水準に回復しています。

 

このように、積極的な設備投資の中で省力化に向けた投資を行うことで、生産性の向上と職場環境の改善を実現するとともに、従業員の定着にもつなげることができるのです。(了)

<記事提供者:(株)日本ビジネスプラン>

(注意)
上記の記載内容は、2025年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年5月1日

中小企業における省力化投資による設備投資対応 その1

 

 わが国において将来的な就業者数の減少が予測されている中、人手に依存しないオペレーションの構築と、そのための設備投資といった取組みにより、人手不足に対応していくことが求められます。

 中小企業庁編「中小企業白書2024年版」では、中小企業を対象としたアンケートに基づいて、人手不足対応を目的とした設備投資の現状と課題について整理しています。

 

まず、人手不足対応を目的とした設備投資について、直近5年間での実施有無を確認したところ、約35%の企業が「実施した」と回答しています。

 次に人手不足対応を目的とした設備投資の実施有無別に、売上高・経常利益率の変化率をみると、「実施した」と回答した企業では、「実施していない」と回答した企業に比べ、売上高及び経常利益のプラスの変化率が高くなっています。この結果から人手不足対応を目的とした設備投資の実施が、業績の向上に寄与している可能性が示唆されています。

 

人手不足対応を目的とした設備投資の効果について回答割合の高い順にみると、「人手不足の緩和(51.6%)」、「残業時間の削減(39.7%)」、「コストの削減(36.9%)」となっています。

 さらに、人手不足対応を目的とした設備投資の検討における課題について、「特にない」と回答した企業を除いて回答割合の高い順にみると、「業務の標準化が難しい(25.1%)」、「投資効果が不明(21.5%)」、「導入のための資金が足りない(19.8%)」となっており、様々な課題が挙げられていることが分かります。

 

このように省力化投資は人手不足の緩和だけでなく、業務効率化による売上増加や業務時間の削減などにより様々な取組みが行える可能性もあるなど、多様な効果が期待されるのです。(つづく)

<記事提供者:(株)日本ビジネスプラン>

(注意)
上記の記載内容は、2025年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年4月1日

雇用保険法の改正

 

◆令和7年4月1日改正施行

 雇用保険では4月以降、大きくいうと4項目が改正されます。順に見てみましょう。

 

①自己都合退職者の給付制限期間の見直し……退職者が失業給付(基本手当)を受ける際の給付制限は現在7日間の待機期間の後、給付制限期間が2か月ありますが、4月からは1か月に短縮されます。基本手当が早くもらえることで求職活動もより積極的になり、再就職までの期間が早まるとみています。

 しかし5年間で3回以上の自己都合退職をした場合の給付制限期間は現状の3か月のままで、短期に転職を繰り返す人に歯止めをかけています。

 一方で離職期間中や離職日前の1年以内に教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けた場合の給付制限はなく、待機期間終了後すぐに基本手当が受けられます。

②教育訓練給付金の創設……教育訓練給付は2024年10月に給付率を引き上げました。2025年10月には新たに「教育訓練休暇給付金」を設けます。

 在職中に教育訓練のための休暇(無給)を取得した人に基本手当相当を支給するものです。

③シニア向けの改正……高年齢雇用継続給付金の給付率が下がります。60歳以降も働き賃金が60歳時点の75%未満に下がった人に対し、今までは最大下がった賃金の15%が支給されてきましたが、10%に引き下げられます。対象は4月以降に60歳になる方です。すでに受給している方は以前と同様15%です。

④育児関係2つの給付金を新設

ア、「出生後休業支援給付金」 男性が子の出生後8週間以内に14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日育児休業給付に13%上乗せし、通常の給付率67%に足して80%とします(手取りで10割相当になる)。男性の育児休業取得を促すための対策です。

イ、「育児時短就業給付金」 2歳未満の子を養育するために短時間勤務をして賃金が下がった場合、支払われた賃金の最大10%を支給し、時短勤務で減った賃金を補う制度が作られます。

<情報提供:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年4月1日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年4月1日

出生後休業支援給付金・育児時短就業給付金の創設

 

◆令和7年4月1日より67%→100%に

 雇用保険の育児休業給付金は広く知られていますが、2022年10月創設の「出生時育児休業給付金」はご存じの方が少ないかもしれません。「産後パパ育休」といって子の出生日から8週間を経過する日の翌日までの期間に4週間(28日)以内の期間を定めて、当該子を養育するための育休を取得した被保険者である男性が対象になります。この産後パパ育休は従来の育児休業給付金と同じ給与の67%相当が支給されます。

 この度この率を上げ100%を補償する「出生後休業支援給付金」が創設されます。

 これにより育休中の収入減をカバーし、特に男性の育児休業を促進することを目指しています。

 

◆支給要件・支給額

 子の出生直後の一定期間に両親ともに(配偶者が就労していない場合は本人が)14日以上の育児休業を取得した場合に出生時育児休業給付金または育児休業給付金と合わせて「出生後休業支援給付金」を最大28日間支給します。ポイントは出生直後に夫婦そろって育児休業を取得することです。夫婦2人分とも支給されますし、育児休業中は申し出により健康保険料、厚生年金保険料が免除され、勤務先から給与が支給されない場合は雇用保険料の負担はありません。また、育児休業と給付金は非課税です。よって休業開始時賃金日額の80%の給付率で手取りの10割相当の手取りとなります。ただし休業開始時賃金日額には上限額があるのでご留意ください。

 

◆申請手続き

 出生後休業支援給付金の支給申請は原則として出生時育児休業給付金、育児休業給付金と併せて同一の支給申請書を用いて行います(別途申請も可能ですが他の給付金の後になります)。

 

◆育児時短就業給付金の創設

 現在は育児のため短時間勤務制度を選択し賃金が低下した労働者に対する給付制度はありませんが、4月より「育児時短就業給付金」が創設され賃金低下分をカバーできるようになります。

 対象は2歳未満の子を育て時短勤務を利用している労働者、支給額は時短勤務中の各月に支払われた賃金額の1割、条件は時短勤務開始前の2年間に12か月以上雇用保険の被保険者であることです。

<情報提供:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年4月1日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年3月18日

事業の成績表の分析で利益を多く残す工夫につなげましょう

 

◆決算書=事業の成績表を分析してますか?

 決算書は一年間の事業の成績表です。個人事業の場合は暦年決算なので、1~2月頃には前年の成績表ができているでしょう。決算書をどう見ていますか。単に前年より増えた減っただけで終わっていませんか。

 もう少しだけ比較対象を拡げ、同規模の同業他社と比べ、自社の強みと弱みをしっかりと認識するところまで、決算成績表を活用してみませんか。

 

◆自業種での適正な原価率・人件費率等は?

 飲食店経営の場合を例にします。「食材費」と「人件費」の「売上高」に占める割合を「FL比率:F=Food、L=Labor」といい、一般的にFL比率の適正値は60%以下といわれています。FL以外の経費(店舗家賃、水道光熱費、機器のリース料など)が30%超えることが多いため、FL比率が70%を超えてくると、利益がほとんど残らなくなり、立ち行かなくなります。そのため、飲食店経営においては、FL比率を常に把握し、改善をしてゆくことが、経営を安定させることにつながります。

 

◆利益増は売上増か経費の削減

 利益増には、売上を増やすか、経費を減らすか、その両方かということになります。

 売上=客数×客単価です。あなたのお店で客数・単価を増やすには、どんな方法がありそうですか。座席数を増やせないか、回転率を上げられないか、客単価を増やすには何か策がないか等々、検討し実行すべきアイデアがいくつか出てくるでしょう。

 経費の削減については、食材費の質を落とすと客離れにつながるので、ムダがないかの検証が必要です。同じ食材でも購入方法いかんで仕入額が高くなっていませんか。業務卸店で仕入れるのではなく、面倒だからといって近所のお店で一般消費者と同じ値段で購入などしていませんか。食材ロスの減少はできそうですか。また、常連客へのサービスとして盛りを大きくして原価増となっていませんか。こうしたものがあれば即見直しが必要です。

 人材配置も過剰に心配して厚く集めすぎていませんか。効率的な動き方の業務マニュアルの作成などでムダな人件費の発生の抑制も目指しましょう。

 数字を比較・分析して、いろいろな工夫をし、多くの利益が残るような成果につなげてください。

<情報提供:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年3月18日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年3月18日

従業員個人の携帯電話を業務利用している場合の諸問題

 

◆個人の携帯電話を仕事利用してませんか?

 従業員個人の携帯電話を業務に使わせたり、利用することを容認せざるを得なかったりといったケースは少なくありません。“法人契約だと高くつくし、利用料としていくばくかの手当を払っているので良しとしよう”といった理由でこれまで過ごしてきたという状況ではなかったでしょうか。

 

◆業務使用部分の経費化と精算方法

 個人携帯の使用料を会社が負担し、会社の経費とするためには、通話明細書等により確認された業務のための通話に係る料金を従業員が明示し、それを企業が従業員に支給すれば従業員に対する給与として課税する必要はありません。また、業務のための通話を頻繁に行う業務に従事する従業員については、国税庁が例示している所定の算式により算出したものを、業務のための通話に係る料金として差し支えありません。

 が、しかし、現実的には、通話明細を開示して業務用だけ抽出して提示することを忌避されたり、毎月計算することが面倒だったりとして使いづらい精算方法です。一定の金額を通話料手当として給与課税としてしまっているケースが多いのではないでしょうか。

 

◆個人情報保護・事業情報漏洩防止のために

 経費問題をクリアしたとしても、コンプライアンスの観点や情報漏洩のリスク、個人情報の保護などから問題なしと言えるでしょうか。

 個人の携帯電話には従業員の個人情報やプライベートな通信記録などの保護されるべき情報が詰まっています。逆に、業務上の企業の機密情報が個人携帯から漏洩してしまうリスクもあります。従業員が退職して機密情報を持ったままライバル企業に就職してしまうこともないとは言えません。また、業務の電話が個人の勤務時間外でもつながる状況にあると労働時間の問題も惹起しかねません。

 個人携帯と会社携帯と2台持ちになると荷物になるし充電も倍になるから面倒だという意見もあります。しかしながら、会社契約で、セキュリティ対策も万全にし、Web閲覧の制限でウイルス感染を防ぎ、会社が情報を管理でき、仕事とプライベートを切り離すことができて、かつ、経費算入の問題もすっきりする法人契約の携帯電話利用にそろそろ切り替えるべき時期になってきているのではないでしょうか。

<情報提供:エヌピー通信社>

(注意)
上記の記載内容は、2025年3月18日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2025年1月28日

代襲相続人になれない養子の子

 

◆相続における養子のメリット

 自分の子供以外に財産を承継させたいときはその者と養子縁組することにより、養子に財産を相続させることができます。

 また、法定相続人の数には他に実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人まで含めて相続税の基礎控除額(遺産に係る基礎控除)を1人あたり600万円増加させて計算し、税負担が少なくなります。ほかにも生命保険の死亡保険金および死亡退職金についても法定相続人1人あたり500万円が非課税となり、相続税額を少なくすることができます。

 

◆相続人の子が代襲相続人となる場合

 相続人となる子が先に死亡していた場合、その死亡した子の子は代襲相続人として親の代わりに相続できます。ただし、代襲相続人から被相続人の直系卑属でない者は除くとされています。

 ところで被相続人の養子が先に死亡していた場合、養子縁組前から養子の子が被相続人の代襲相続人になれるかが問われた裁判がありました。

 

◆養子の子が代襲相続人になれない場合

 令和6年11月、最高裁では養子の子が代襲相続人になれないとされました。被相続人には配偶者も子もなく、親も死亡していました。そこで被相続人の母と養子縁組していた被相続人の従妹がただ一人、被相続人の兄弟姉妹(養子)として相続人になりますが、被相続人より先に死亡していたため、その子(養子の子)が代襲相続人として不動産の所有権移転登記を申請しました。登記官は「申請の権限を有しない者の申請」であるとしてこれを却下したため、裁判となりました。

 原審(高裁)は、兄弟姉妹が相続人となる場合、代襲相続人の条件である「被相続人の直系卑属でない者を除く」を「傍系卑属でない者を除く」と読み替え、養子の子は傍系卑属で代襲相続人になれるとしました。

 最高裁は養子縁組前に出生した養子の子は養子縁組による血族関係を生じないことから代襲相続人になれないとした過去の判例を参照し、本件においても被相続人の兄弟姉妹が被相続人の親の養子の場合、養子の子は被相続人と養子の共通の親の直系卑属でないことから養子の代襲相続人とはなれないとしました。

 本件では、遺言書を作成しておけば相続できたものと思われます。傍系卑属の養子縁組には今後、注意が必要です。

<情報提供:エヌピー通信社>

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上記の記載内容は、2025年1月28日現在の情報に基づいて記載しております。
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■2025年1月28日

年金と税制

 

◆老齢年金は課税、障害・遺族年金は非課税

 公的年金給付は受給権者の生活の安定のため、支給を受けた金額が租税等の課税対象とならぬよう課税対象から外されています。ただし例外的に老齢年金は課税対象とされています。これは、老齢への備えとして保険料納付実績に比例した給付であり、一種の貯蓄的な性格や給与の後払い的な性格があること、保険加入中に被保険者として納付した保険料は社会保険料控除として拠出段階ですでに非課税であること等を勘案したものとされています。

 障害年金と遺族年金はあらかじめ発生を予期できないリスクに対応して給付を行うもので非課税とされています。

 

◆公的年金は公的年金控除の対象

 公的年金等の収入は雑所得に区分され、公的年金等控除額を差し引いて、所得金額を計算します。公的年金控除の額は定額控除40万円と定率控除(50万円を差し引いた後の年金の収入に応じて、25%、15%、5%と段階的に減少)を合計し、合計額と最低保障額(国民年金基金、65歳以上は110万円、65歳未満は60万円)の大きい方の額になります。

 公的年金控除は基礎年金、厚生年金、厚生年金基金、国民年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金(企業型・個人型iDeCo)等が対象です。

 

◆老齢年金でも一定額以下は非課税

 単身者で公的年金控除の最低保障額110万円と基礎控除48万円に支払った医療保険料、介護保険料等の社会保険料控除を加えた額が所得年金収入158万円に社会保険料の額を加えた額以下の場合は、課税所得がないので所得税は非課税になります。

 住民税を見ると公的年金等控除最低保障額110万円を差し引いた額が均等割り非課税基準以下の場合は非課税です。非課税基準は自治体により異なりますが、東京23区や指定都市の基準は同じです。

 年金に所得税がかかる場合は、日本年金機構が年金支給額から所得税を源泉徴収して国に納付します。公的年金等以外の所得が20万円を超える場合や公的年金等の収入が400万円を超える場合は確定申告が必要です。

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(注意)
上記の記載内容は、2025年1月28日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。